Little AngelPretty devil 
      〜ルイヒル年の差パラレル 番外編

    “夏の始まり?”
 


まだ梅雨が明けぬというに、
暦の上、やって来るのが夏至という節季で。
一年で一番 昼の長い日、なので、
こればっかりは、
太陰暦だから太陽暦だからという
違いもないのは、まま判るとして。

 「でも、これからの方が暑くなりますよね?」

陽が長く出てる日って言われても
それほど暑い印象もなくて。
こんな早めに来たっけって、
いつもびっくりさせられるんですよねと。
この時期からという遅れ気味、
若緑がやわらかく萌え出ている槙の梢を
広間を巡る濡れ縁から眺めつつ。
小さな書生くんが小首を傾げるのへ、

 「それ言ったら冬至だって、
  まだ冬の取っ掛かりだって頃に来るだろが。」

巻き上げた御簾の下、
巻物や和綴じの書物を文机へ積み上げて。
そろそろ夏の国事や式典様々への
段取りを考え始めにゃならんとばかり、
過去の記録を浚っておいでだった神祗官補佐様が、
そんな風に あっさりと応じて下さる。

 「あ…そういや そうですね。」

冬至のほうは、年が明ける半月前、
旧の暦だと もっと秋の内にやって来る勘定になったはずで。

 「いつぞやの金環食で、
  ほんのちょっと角が欠けただけで、
  それと判るほど薄ら寒くなったよに。
  お天道様の威光は確かに凄いもんだがの。
  暑さ寒さってのは、
  日照時間の長さだけじゃあねぇんだろうよ。」

 「そうなんですか。」

ちなみに、冬至の後の場合は、
陽の入りが先に遅くなるカッコで日が長くなるので、
朝起きが寒くて辛いのは、
年が明けてからやって来る立春まで変わらないですしね。

 「そうは言っても、
  夏に至るとはよく言ったもんだよな。」

梅雨の雨が途切れて陽が差せば、
それはもはや夏の強さを感じさせる代物で。
張りがあってよろしいと、
吊り上がった目許を力ませ、強気なお顔を見せる蛭魔だが、

 “ああ これから、
  お師匠様がお空を怒鳴りつける夏が始まるんだなぁ。”

一番苦手な冬の寒さに比べれば、
まだ意気軒昂で過ごす彼じゃああるけれど。
冬に比べてといえば、
昼の蒸し暑さも由縁して、夜中に出歩く人も増える夏でもあるし、
しょむない悪さをする公達が主な原因の、
怨嗟による手ごわい妖異が多発するのも…。

 「……え〜っとぉ。」

何か、大変な季節の始まりなんだなぁというの、
あらためて数えてしまった瀬那くんで。
まま、頼もしいお館様が頼りにされて
忙しくなるのは致し方のないこと。
そんな身となるからには鬱憤もつのりましょうから、
お空に向かって吠えるのもしょうがないと。
そこは腹をくくって、進さんと二人で 支えて差し上げましょうよ。

 “……はいっ、頑張りますっ。”

決意も新たに大きく頷いたはよかったが、

 「? 何だ? 眠いなら昼寝してもいいぜ?」

今晩の封滅はちょいと早めに出掛けるから、
たんと寝ておけと、
何だか微妙に誤解されちゃってますが。(苦笑)
どんまい、セナくんっ!


  「こらこら。
   筆者のくせに、時代考証 考えな。」

  ううう〜〜〜。




   〜Fine〜  14.06.22.


  *夏至と冬至の話は、別のお部屋でも出て来ましたね。
   (ねぇ、Hさん)笑

   NHKの天気予報のお姉さんによれば、
   今降ってる雨こそが“梅雨の雨”なんですてね。
   これまでの豪雨は、梅雨前線関係ない雨だったとか。
   暑かったり涼しくなったり、
   体調を崩す方も多かったでしょうね。
   でも、これが明けたら夏が来るのかと思うと、
   ……たまに涼しい、今のままのほうがとも思うのですが。(おいおい)


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